ヘルパーさん達のこと その②
介護が必要になったとき、お世話になる方達にどれだけ恵まれるか?は、非常に大切なことです。介護保険制度に則って、その業界の方達はやるべきことをやってくれるのですが、そこに人としての思いやりや寄り添う気持ちがあるかどうかは、個人の力量に任せるしかないのです。そこまで資格試験に反映しないのが残念です。
「ヘルパーは、一体何をしてくれるんや!」と、父は言いました。
大抵の高齢者にとって、他人が家に上がりこむこと自体に抵抗があります。
ヘルパーさんも私達家族が頼りにしたような管理者のヘルパーさんばかりではないのが現実です。
彼女の指導を受けた沢山のヘルパーさんが交替で出入りをします。
1時間でお昼ご飯の準備をお願いしていても 冷蔵庫の残り物を探してチンして出すだけだと一体どれだけの時間になるでしょう。掃除をお願いしてもそれは人に依って妥協の度合いは違います。
あるとき、前日にスーパーで父が買ってきたお弁当が残っていたからとチンした鶏肉が歯が立たないほどに硬かったらしく(見た目も硬そうでした)、よくもこんなものを出せたわねと情けなかったことがありました。
残念ながらそういうことをするヘルパーさんは、万事がそうなのです。
それでも父は娘の顔を見ると腹が立つ状態になっていたので、「しばらく顔を出さずに、任せて下さい」と管理者の彼女に云われました。せめて、食事だけでもお手伝いしようと思い、松花堂弁当箱を買いました。ご飯だけ炊いてもらって、おかずをそこに詰めて、玄関の外でヘルパーさんに託しました。
先日、息子達が夕飯を食べるというので、何年振りかでそのお弁当箱を出してみましたが、懐かしさと共にあの頃、まだ自分で食べられていた母を思いました。
少しずつ出来ないことが増えていく父と母。父の怒りは暴言と愚痴、そして酒量も増えていきました。反比例するように母の言葉は減っていきました。家に行っても入れて貰えない娘。母に会うためにはディサービスの施設まで行くしかありませんでした。母は車椅子に座って、施設に置いてあった犬のぬいぐるみを膝に置いてもらっていました。
「かわいいやろう」とぬいぐるみの頭をなでながら言いました。母は犬が好きで家でも長い間飼っていました。せっかく会えたのに、私は父への不満ばかりを母に聞かせていました。母は全て受け入れるかのように、黙って聞いてくれていました。きっと父と二人のときは、父の愚痴を散々聞かされているはずなのに、まるで父も私も母をゴミ箱のように、自分の不満を捨てたいために言い続けていたのです。
救われたのは、家に来るヘルパーさん達はみんな母の笑顔が好きだからと言ってくれました。父のことでさえ、自分の実家に帰ったみたいと言ってくれるヘルパーさんもいました。
「どうしてそんなに良くしてくれるのか?」と父はヘルパーさんに問うたそうです。
「○○さん(母の名前)が好きだから」と。きっと、父は嬉しかったと思います。
ヘルパーさん達の多くは、母を名前で、父のことは「お父さん」と呼んでくれていました。
至らない娘の代理を務めてくれたヘルパーさん達に感謝です。
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